今年2月に発覚した名古屋市発注の地下鉄工事をめぐる談合事件で、談合の申告を行った準大手ゼネコンである「ハザマ」だけが自主申告制度により刑事告発を免れていましたが、この「ハザマ」の申告は、談合の疑惑が週刊誌などで報道された後で、すでに周知の事実となってからであったことがわかり、「自主申告制度の趣旨に合っていない」と判断され、「鹿島」や大林組など他の32社と同様に、独占禁止法違反(不当な取引制限)で排除措置命令が下される方向であることがわかりました。
ただし、課徴金納付は免除される見通しです。
排除措置命令は、2006年2月と6月に行われました。
排除措置命令とは、独禁法違反行為を認定した事業者に対し、公取委が下す行政処分。談合やカルテルの再発防止を取締役会で決議させたり、社内の法令順守体制を見直させたりして、公取委に報告を求める。発注元の国や自治体などは、排除措置命令や課徴金納付命令に基づいて、指名停止措置をとることになります。
名古屋市の地下鉄工事を巡る談合事件の対象となっているのは、市営地下鉄6号線(桜通線)延伸工事計5工区の入札に参加したJVを構成する計32社と、下請けに入ることを条件に入札参加を見送った「裏JV」1社の計33社です。
落札額の総額は約192億円に上ります。
この事件で、公取委は今年2月末、談合の仕切り役を名古屋支店顧問が勤めていた大林組と、落札したJVの幹事だった鹿島、清水建設など4社を独禁法違反で刑事告発しました。5工区のうち「鳴子北駅」工区を落札したJVの幹事だったハザマには、自主申告制度に基づいて告発を免除していました。
自主申告制度は昨年1月に施行された改正独禁法の運用方針に盛り込まれ、立ち入り検査や捜索の前に、公取委に違反行為を報告した最初の1社は刑事告発や課徴金が免除される制度です。
ハザマの申告は、公取委が強制調査に着手する約1カ月前で、他の事業者に違反行為を強要するなどの際立った悪質性もなかったことから
、運用方針通りの扱いを受けていました。
しかし、申告は、ゼネコンの名古屋支店関係者が公取委から任意の事情聴取を受けたことが報道された直後だったため、談合に加わっていた他のゼネコンからは、「ハザマが刑事告発を免除されたのは納得できない」などと、不満も出ていました。
一方、課徴金納付命令は工事を落札したJVの計15社のうち、ハザマ以外の14社が対象になります。
課徴金は原則売り上げの10%で、一部は10年以内に同命令を受けた「前歴」があって、15%の算定率が適用されるため、総額は20億
円以上になるそうです。
自主申告制度は、密室で行われ、発覚しにくい談合摘発を促進するために導入されました。
しかし、ハザマの申告は疑惑の報道後で、談合は「周知の事実」だったことから、告発が免除されたことに対し、業界では不満が広がっていたようです。
ただ、ハザマが課徴金免除や指名停止期間の短縮で優遇される事には変わりは無いそうです。